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自然の美しさと伝統文化が融合した飛騨高山
観光

宇津江四十八滝県立自然公園——。
その名のとおり、谷沿いに連なる大小の滝と清らかな渓流、そして深い森林が織りなす、四季折々の表情豊かな自然の宝庫だ。
公園の入口から遊歩道を進むと、苔むした岩、しっとりと湿った木の香り、耳に届く水音が少しずつ深まり、山の中へと吸い込まれていくような感覚に包まれる。道はよく整備されており、歩きやすく、森林浴を楽しみながら散策できるのも魅力だ。

その名から「四十八筋の滝がある」と思われがちだが、
実際には十三ほどの滝からなる。
この不思議な名前の由来こそ、
今もこの里に語り継がれる“よそ八伝説”にゆかりがある。
今回、晩秋の宇津江四十八滝を実際に歩き、
伝説の舞台をひとつずつ辿りながら取材を行った。


滝の迫力だけではなく、
山に満ちるひそやかな息づかいが、歩くたびにそっと寄り添ってくる。
湿った岩肌の匂い、風に揺れる木々の影、流れる落ち葉、
清流が刻むやわらかな音色——
そのすべてが重なり合い、
ここに流れてきた長い時の深さを静かに伝えてくれるようだった。
宇津江四十八滝は季節ごとに素晴らしい花々が咲き乱れます。クリンソウ約15万本、ササユリ約2万本、アジサイ約5千本など。
四十八滝を訪れる前に少し寄り道してみましょう。
ご注目いただきたいのが、独特のねじれを持つ巨大な「捩栗の切り幹」である。

幹の径は約三メートル。
展示されているのは一部だけでも迫力があるが、
もとは山頂にそびえ、三千年の時を生き抜いたと伝わる古木だ。
背後にある説明板にはこうある。
「昔、大沼の大蛇が巻きつき、この姿になったといわれている」
これがよそ八伝説と繋がるようだ。


ただの民話として片づけられないほど、
幹のねじれはあまりに異様で、力強く、そしてどこか神々しい。
その内部には、不動明王が安置され、
木の中の小さな祠のような空間に静かに佇んでいる。
光が差し込むと、不動明王の表情が柔らかく浮かび上がり、
まるでこの地に生きた人々の祈りや願いを抱きとめているかのようだ。
“木の中の仏様”と呼ぶにふさわしい、重厚な存在感がある。

原文 【宇津江に古くから伝わる捩栗の切幹の一部分です。四十八滝上に約三千年の昔から有り直径は約三メートルと言われています。捩栗は名前のごとく幹はもとより枝先までも捩じれていました。伝説では四十八滝上の大沼に住んでいた大蛇が巻き付き、今の姿になったと言われています。宇津江の里にはこの捩栗の切幹は峰越林道展望台前、四十八滝いこいの家の前、そしてここの三カ所あります。風雨に晒され朽ち果てる姿よりも伝説と共に残したい一念でこの館を建設しました。
昭和63年(一九八八)十一月吉日 宇津江よそはち会】
木の中の仏様の場所はこちら↓↓↓
宇津江四十八滝を語るとき、
その美しい景観とともに欠かせないのが、古くから里に伝わる「よそ八伝説」である。
静かな山あいの風景にそっと寄り添うように、今も語り継がれてきた物語だ。
※掲載している画像はAIによるイメージです。伝承の紹介にあたり、一部ストーリーをわかりやすく再構成しています。
よそ八は、病気の母を支えようと、少しでも力になりたい一心で
山奥へイワナを求めて入った心優しい若者だった。
深い森を分け入り、澄んだ流れをたどりながら歩を進めていく。

大沼のほとりでは、ねじれた幹を持つ捩栗の木に、
巨大な大蛇が巻きつくように姿を現した。
その気配は重く、湖面の静けささえ震わせるほどだった。
その妖気に触れたよそ八は、ほどなくして高熱に倒れ、
静かな山あいに身を伏すことになる。

その夜、苦しむよそ八の前に現れたのは、
月明かりに照らされるように静かに訪れた、美しい旅の娘「およし」だった。
彼女は何も語らず、ただ黙って額の汗を拭い、水を汲み、薬草を煎じ、
夜通し寄り添うように看病を続けた。

その献身は日を重ねても途切れることがなく、
弱っていたよそ八の体には、再び力が戻りはじめる。
やがて彼はゆっくりと起き上がり、歩けるほどに回復するまでになった。

二人の間に子供も産まれ、幸せな家庭を築くのだが、
今度はおよしの体がみるみる衰えていく。
やがて彼女は静かに告げる。

「実は私は大沼の大蛇の化身。海で千年、陸で千年の修行を重ね、
本来なら今こそ天へ昇るはずだったのです。
けれど、あなたを救うために血を捧げ、その力を使い果たしてしまいました。
このままでは、私は消えてしまうでしょう。」
大蛇は、ひとりの若者が母を思うまっすぐな心に胸を打たれ、
自らの未来さえ差し出す道を選んだのだ。

よそ八は諦めなかった。
力を失い、消えゆこうとする大蛇をなんとか救おうと、
山の奥へ奥へと歩き、行者を探し求め、天に祈り続けた。
そして二十一日目——。
よそ八の必死の祈りは、ついに滝不動明王へと届いた。
その瞬間、山あいの静けさを破るように天を裂く雷鳴が轟き、
稲光が大沼の上をまばゆく走った。
光に包まれた大蛇の身体は、もう力尽きようとしていたはずだったが、
次の瞬間、大きくうねり、まるで息を吹き返すようにその姿を変えていく。
しぶきを巻き上げながら天へと伸び上がり、やがて龍の姿へと昇華していった。

滝不動明王の念力に導かれるように、
龍はまっすぐ天へと昇っていった。
その直後、谷は轟音を上げて水が引き、
岩があらわになり、
そこに大小多数の滝が生まれた。

伝説によれば、それが“四十八滝”の始まりである。
のちに弘法大師(空海)がこの地を訪れ、
よそ八の名を「仏法四十八願」になぞらえたとされ、
この名は人々の記憶に深く根付いていった。
※諸説あり 伝承の紹介にあたり、一部ストーリーをわかりやすく再構成しています。
また国道41号線から宇津江方面へと続く道の途中、四十八滝橋にさしかかると、橋のたもとに静かに佇む二体の銅像が目に入る。
よそ八とおよしと赤ん坊、そして天へ昇る龍——地域で語り継がれてきた物語を象徴する姿だ。


近づいてみると、銅像の足元には由来を記したプレートが設置されていた。
そこには「龍とよそ八は、宇津江四十八滝にまつわる民話である」としたうえで、この美しい物語を“世の人々の大切な財産として永く残したい”との想いから、国府・古川バイパス建設の記念事業として建立されたことが刻まれている。

むかしこの里に住む「よそ八」という信仰心の厚い親孝行の若者が初秋の或る日のことこの山奥に住む大蛇の妖気にとりつかれ高い熱を出して寝込んでしまった
その夜それはきれいな娘がたずねて来て寝ずの看病をつづけた結果「よそ八」はすっかり元気になった
娘の名は「およし」といい この娘こそ宇津江の大沼に住んでいた大蛇の化身で或る年の春の日「およし」は「私は親孝行のあなたを助けるために私の血をしぼって飲ませましたのでこんなにやせおとろえました」
何時までもそばにいたいのですが私は今まで山に千年いたのでこれから海千年の修行にいかなければなりません」と涙を流して「よそ八」と赤ん坊に別れを告げたとたん滝不動明王の念力によって一天にわかにかきくもり雷鳴とどろく大嵐となり大蛇(およし)は龍となって天へと昇っていった
後年諸国修行の途上この地に立ちよられた弘法大師が「よそ八とは仏法四十八願を意味するもの」と言われ その後 この奥にある滝を四十八滝とよぶようになった
きれいな涙の物語りに包まれたこの宇津江四十八滝を世の人々の大事な財産として とこしえに顕彰するため「龍」と「よそ八」と「およし親子」像を国府・古川バイバス建設を記念し建立した 作者 林清史、書国府町長 川上廣之】
この銅像は、橋を渡る人に静かに語りかけてくるような存在感がある。
四十八滝に向かう前にその姿を目にすると、この地域が自然だけでなく、人々の思いと歴史に支えられてきたことをそっと教えてくれる。
四十八滝橋はこちら↓↓↓
実際に取材しながら山道を登ると、
空気がひんやりと澄み、滝のしぶきが細かい光になって舞う。
足元に積もる落ち葉は、晩秋の深まりを静かに告げていた。

一筋の水が岩を滑り落ちる音。
谷を渡ってくる冷たい風。
湿った苔の香り。
そのどれもが、遠い昔の物語を呼び覚ますようだ。

「およしは、こんな滝の音を聞きながらよそ八を看病したのだろうか」
「雷雨に包まれ龍が昇った景色は、どんな光景だったのだろう」
などと想いを重ねながら歩くと、四十八滝はただの観光地ではなく、
“伝説と現実がゆるやかに重なる場所” であることが、
じんわりと胸に迫ってくる。
捩栗の木が保存され、不動明王が安置され、
龍とよそ八と親子の像が建立されたのは、
すべて地元の人々の思いによるものだ。
物語をただ語り継ぐだけでなく、
“見える形で残したい”という願いが、
今の四十八滝の文化を支えている。

毎年11月3日に行われる「四十八滝 秋の感謝祭」は、
その象徴のひとつ。
名物「よそはち汁」は、伝説の名を今に伝え、
地元のリンゴや木工製品は、この地の暮らしの温度をそのまま届けてくれる。


自然だけではない、
「人の営みそのものが四十八滝を育ててきた」
——そんなことを強く実感しました。
取材の終盤、最も水量の多い滝の前に立ったとき、
しぶきが頬を打ち、胸に響くような低音が体を包んだ。

その瞬間、不思議と
「ここには確かに物語が生きている」
そう感じた。
滝が流れ落ちる音は、
よそ八の祈りであり、
およしの涙であり、
人々が守り続けてきた願いの音でもある。

四十八滝は、ただの“自然”ではなく、
祈り・別れ・感謝・愛情——
何百年も前から受け継がれてきた“心”そのものだ。
宇津江四十八滝を歩くときは、そっとこの物語を思い出してみてください。
滝のせせらぎに耳を澄ませ、ひと息つくと、その情景が現在の風景に溶け込み、まるで寄り添うように語りかけてくるはずです。
物語を知って訪れると、同じ道のりでも見える景色や感じる空気が少しだけ違ってくる——そんな不思議な体験が待っています。
最後に記者の想像で龍とよそ八のお話をハッピーエンドにしてみました。

——宇津江四十八滝、、、
ここは伝説が確かに息づく場所である。
飛騨高山へお越しの際はぜひ訪れてみて下さい。
INFORMATION

宇津江四十八滝は、朝の静けさや、紅葉の季節を歩くのがいちばんおすすめです。
滝の音や森の匂いがより鮮やかに感じられ、自然の神秘に包まれるような時間を過ごせます。
散策途中では、地域に伝わる「よそ八伝説」を思い出してみてください。
物語を知って歩くと、景色が少し違って見えてきますよ。
歩いたあとは、近くの「しぶきの湯」で温まるのもおすすめです。心も体もほっと癒されます。
※この情報は2025年12月現在の情報です。
この記事を書いた人:ひだホテルプラザKさん

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